SAI建築社が提案する
暮らしと住まいの新しいサイクル
と題して定期的にお届けしている
WEBマガジン「SAIKURU」
共有スペースを整理し、
未来を見据えた付加価値を。
Case 181
【佐賀県・鳥栖市】2023年2月完成
ご夫婦と4人のお子様、そして愛犬、愛猫が共に気持ちよく過ごせるイエ。そんなS様邸は2023年2月、佐賀県鳥栖市内のやや郊外に完成しました。元々、ご夫婦ともに愛媛県のご出身。仕事の関係でこの鳥栖市にやって来ましたが、こうしてイエを建てることになりました。その経緯をイエづくりの窓口になったご主人に伺います。
将来を見据えて
イエに付加価値を。
——鳥栖に来られたのはいつですか。
およそ5年が経ちましたね。コロナ禍になるちょっと前でした。本当は2〜3年くらいで愛媛へ戻る予定だったのでこのイエと同じエリアにアパートを借りて住んでいたんです。ところが社会情勢も一変し、結局、いつ地元へ戻れるかわからなくなってしまって。その間に家族も増え、アパートが手狭になってしまい、新しい住まいについて検討を始めました。
——最初からイエという選択肢ではなかったそうですね。
そうなんです。最終的にイエになったという感じになります。できればアパートが良いなと思っていたんですが、上の子たちが通っている小学校から学区が変わらないこと、家族6人が住める間取り、犬と猫を飼っているのでペットOKな物件、それらの大きく3つの条件にマッチする物件を探してみたんですが、全くない。本当に全然なかったので、必然的に戸建てにするしかないなという結論に至りました。
——Sさんの理想を叶える点では戸建てがベストな選択ですね。
もし、また10年くらい経って地元の愛媛に戻るという話になったら、その時にはイエを売れば良いかな、と。戻れるなら、やっぱり地元が良いですしね。そういった点から、将来の売却も見据えて、できれば付加価値のあるイエに仕上げたいなという方向性で考え始めました。
——イメージどおりの土地も見つかりましたね。
最低でも80坪くらいはほしいなと思っていて。実家に戻る際、そして仕事においても車移動になるので、高速道路のインターへのアクセスも踏まえていました。1年くらい掛かりましたが、ようやくイメージ通りのこの土地が見つかって安心しましたよ。
子供が多くて、自宅の庭で遊べるようになったら良いなと思っていたので、この250坪の土地は申し分なしの広さですね。インターへもアクセスしやすく、いわゆる住宅街になるので、気兼ねなく生活できるのが良いですね。アパートだと、子供が多い分、いろいろと生活音で気を遣っていたので。
——SAI建築社を選んだきっかけは。
私のお客様がSAIさんでイエを建てられていたんですよ。建物のデザイン性はもちろん、大工さんたちの丁寧な仕事が信頼できるなと思えたんです。というのも、私の仕事が欧米住宅設備・機器販売なんです。そういう背景もあって、これまでにたくさんの現場を見てきましたが、SAIさんだったらイメージ通りのイエになるなと思えました。
解放感のあるLDKと
メリハリのある間取り
——イエづくりにおいての大きなポイントは。
一つは解放感があるLDKですね。もう一つがそれに伴うメリハリのある空間づくりでしょうか。特にLDKにおいては私の仕事の兼ね合いもあり、ショールームとまではいきませんが、せっかくだったら私の会社の実績として自信を持って紹介できるようにしたいなと考えました。私の理想を全て詰め込んでいます。
——ではLDKのこだわりからお聞きして良いですか。
今は子供たちが小さいのですが、5年、10年と経っていくうちに、大人6人が日々、過ごすリビングになることを想定しました。そのうち、子供たちにも家族ができるでしょうし。そういう将来を見据えて、LDKで30畳はマストかなと思っていました。最終の一歩手前までは28畳がギリギリという話だったんですが、当初の庭に設置するウッドデッキの計画を一旦見送り、その分、室内を広くするという話で落ち着き、29.5畳まで広げることができました。このギリギリのせめぎ合いについては、間取りを設計士さんと何度も確認しましたね。結果として、やっぱり1.5畳分、広げられたのは大正解でした。約30畳からしたら1.5畳分は些細な違いに思うかもしれませんが、実体感として全く違いますね。
——広さが引き立つ工夫も随所に取り入れてありますね。
できるだけ空間を広げたいという考えがあったので、天井を一段上げてもらいました。あとは折り下げ天井を組み合わせて立体感を出すことで、さらにその高さが引き立つようにしてもらったんです。あとはSAIさんらしい建物という点では大きな窓ですね。窓自体もリビングにはできるだけ多く取り入れておきたかったので、その点においてもしっかり叶えてもらいました。リビングの象徴になっている暖炉もすごくマッチしています。
また、エアコンについても空間の中で主張してしまいそうだったこと、広さがあるので馬力がほしかったこと、それらを踏まえて業務用にしました。天井に埋め込むタイプになるので、全くエアコンの存在感がありません。無駄な凹凸、配線が見えないように配慮してもらえたので、すごくスマートですね。少し細かい点では、2Fへの階段もスケルトン階段を採用しました。
こうして随所に広さが際立つような工夫を盛り込んでもらっていますが、大前提として、SAIさんが取り入れているテクノストラクチャがあるからこそですね。29.5畳の空間の中で、そのど真ん中あたりに柱を入れずに空間づくりが進められるのは何よりのメリットですね。ちょっとだけ補強として壁を出しているんですが、それについては元々、冷蔵庫を置く場所にしようと思っていたので問題ありませんでした。全てがイメージ通りに仕上がっています。
欧米メイドの設備機器が
洗練された空気を与える
——LDKではSさんの会社で取り扱っている欧米の住宅設備機器がデザインのアクセントになっています。
大きなところではオーストリア製の冷蔵庫ですかね。両サイドは収納になっていて、できるだけキッチンの上にモノを出しておきたくないという考えから、それらの隠したいものをここに収納しています。電子レンジや真空処理用のマシンなんかも、ここに置いているんです。
——キッチンのお話が出ましたが、本当にプロの料理人も納得の造りになっていますね。
家族が多いということもあり、コンロの口数は多いに越したことがなかったので、合計で5口用意しています。ちなみにコンロも火力の強いガスコンロです。あとは食器洗浄機も海外メイドのもので、使い勝手がとても良いんですよ。
また、キッチンの動線を考えた時、アイランドキッチンにすると、その背面の壁側が生きないなと思い、キッチンは壁付けにして、アイランドで想定していたところを作業台にしました。この作業台の下に食洗機を配置し、側面は食器の収納スペースとして活用しています。
作った料理、食べ終えた食器をサッと置けるだけでとてもストレスが軽減されます。天板を含めて、キッチン周りには木目を積極的に取り入れています。汚れが目立ちませんし、何より温かみが出て、とても気に入っています。
——キッチン以外にも自慢の住宅設備機器はありますか。
浴室に取り入れたシャワー、洗面所の水洗ボウルも大変気に入っています。例えばこれらの設備関係は、住宅メーカーによってはこちらが「取り入れたい」と言っても、対応に難色を示されてしまうこと珍しくありません。SAIさんの場合、こういうイレギュラーなオーダーにも柔軟に対応していただけるということがわかっていたので、その安心感も決め手になりましたね。
共有か、個人か
空間を大きく二つに分ける
——メリハリのある空間づくりについても教えていただけますか。
想定以上の土地が手に入ったとはいえ、無限に大きなイエを建てるのは現実的ではありません。間取りにおいては取捨選択が必要だなと思っていたんです。リビングを広くしたい、キッチンも広くしたい、書斎も広くしたい、子供部屋も・・・というように全ては実現できませんから、優先順位を整理しました。そして割り切ることにしたんです。
——割り切るとは。
LDK、玄関、洗面所という家族全員が使う、いわゆる共有スペースについては理想の面積を実現させるために全力を尽くしました。それ以外の、つまりパーソナルスペースについては最低限にとどめています。子供部屋、私たち夫婦の主寝室、私の書斎など、個人で使う部屋のことです。そうやって共有スペースとパーソナルスペースで大きく分けることで、頭の中がすっきりと整理できました。
——LDKについては先ほど熱く語っていただきましたが、玄関部分も確かにゆとりがたっぷりありますね。
以前のアパートの場合、家族で出掛けようとした時、玄関を出るその一瞬のタイミングで、家族全員が一ヶ所に集合します。本当に靴を履くために行列ができたり、上着を羽織る時に手がぶつかりあったり、そういったことが起こっていたので、絶対に解消しておきたいと思ったんですよね。今では4人同時に靴を履くことができます。玄関の内側はもちろん、玄関ポーチについても余裕を持たせているので、出発前の大渋滞はすっかり無くなりました。
また、洗面所についても同じ発想です。我が家の場合、男女比でいうと女性の比率が高いので、洗面所でも玄関と同じことが将来、起こりうると考えていました。それで洗面ボウルを2つ設置して、朝の身支度が円滑に進むようにしているんです。
——まさに先回りの発想ですね。暮らしやすさも比例してアップしていそうです。
テーブルや棚の上に極力モノを置かないということを決めていたので、収納スペースをたくさん用意しました。キッチン奥のパントリーを含め、収納にも余裕を持たせています。結果として、モノが取り散らからないので、イエは以前のアパートよりも格段に広くはなっているのに、掃除の負担は大きく軽減されています。
——メリハリのある空間づくりが成功しているのですね。
イエ自体はしっかり完成できたと思っているので、これから時間を見つけてウッドデッキづくりを進めたいなと思っています。ウッドデッキができれば、リビングがさらに広く使えると思うので、とても楽しみです。最終的には土地に余裕があるので、インナーガレージまで作れれば文句なしですね。ここまで手を掛けると、いざ手放す時に惜しくなるかもしれませんが。
House Producer
SAI Design Architect
Director
岩倉 貴志
ヒアリング当初から明確なプランや外観イメージをご用意されていたので、プレゼンから打合せまでスムーズに行えました。
住宅設備や暖炉等、取り入れたいものがたくさんありましたが、しっかり打合せの中でイメージのすり合わせを行い、理想のリビングに近づけることが出来たと思います。
今回取材させていただいた
S様邸写真は
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ヌードルライター山田がススメる
今月の一杯
【佐賀県・武雄市】
井手ちゃんぽん 本店
佐賀におけるチャンポンの原風景。
佐賀県・武雄のソウルフードといえば、やはりちゃんぽん。かつて炭鉱産業で賑わっていたこの武雄・北方エリアでは、長崎と同じ理由で、つまり「安く、美味しく、お腹いっぱいになる」という三拍子揃った料理として、ちゃんぽんは絶大な人気を得てきました。その元祖ともいうべき存在が1949年創業の「井手ちゃんぽん 本店」です。今では、井手ちゃんぽんのある国道34号線沿いにちゃんぽん提供店が集中していて、地元では “ちゃんぽん街道”といって親しまれています。
実は開店当初、ウリにしていたのはカツ丼だったそう。初代店主がカツ丼のタレを学ぶために大阪で修業を積み、戦後にこの店を食堂として開業しました。ところが、カツ丼以上にちゃんぽんが評判となります。こうして昭和55年には現在のちゃんぽん専門店に。
ここのちゃんぽんは一度食べると絶対に忘れないくらいに強烈なインパクトがあります。野菜が “山盛り”なんです。かつての炭鉱夫たちの胃袋を十二分に満たしてきた歴史が背景にあるちゃんぽん。そんな当時のあり方が、今、目の前で体感できるという点において、生ける“ちゃんぽん遺産”といっても過言ではないでしょう。
ドンと目の前に置かれた野菜大盛りのチャンポンを食べてみると、まず、野菜の火入れに目を見張りました。シャッキリとした食感がしっかり生きていて、食べていてリズムがいい。
そして野菜の下から麺を手繰り寄せてみると、これが実に良い塩梅。厨房を観察しながら待っていたんですが、麺が絶え間なく茹で続けられていました。つまり、生麺。茹でたての麺の感触が心地よく、本当にうっとりさせられるんです。
忘れてはならないのが、豚骨で引いたという、コクがありつつも後味の良いスープ。まろやかな豚骨だしに、肉や野菜といった具材の旨みがしっかり凝縮しています。
絶妙な火入れによる野菜、茹でたて自家製麺、まろやか豚骨スープの三位一体。その美味しい“山”、武雄に来たらば平らげるしかありません。
井手ちゃんぽん 本店
【住所】佐賀県武雄市北方町志久1928
【電話】0954-36-2047
【営業】10:30~21:00
【店休】水曜
【P】あり
【HP】http://www.ide-chanpon.co.jp/
山田祐一郎(KIJI ヌードルライター)
1978年生まれ。2003年よりライターとしてのキャリアをスタート。現在は日本で唯一(本人調べ)のヌードルライターとして、雑誌、ウェブマガジン、書籍などの原稿執筆に携わる。毎日新聞での麺コラム「つるつる道をゆく」をはじめ、連載多数。webマガジン「その一杯が食べたくて」は1日最高13,000アクセスを記録したことも。著書「うどんのはなし 福岡」「ヌードルライター秘蔵の一杯 福岡」。2017年スマホアプリ KIJI NOODLE SEARCHをリリース。未知なる麺との出会いを求め、近年では国内のみならず海外にも足を運ぶ。2019年より製麺所を営んでいた父の跡を継ぎ、「山田製麺」の代表に。執筆活動と並行し、製麺にも取り組む。
4コマ漫画
レッツゴーサイクル
今回も一挙に2話分公開!
ラブラドール犬のサイクルと建築士のケンちゃんが
繰り広げる微笑ましい暮らしぶりをお楽しみください。
【Kanac 】プロフィール
イラストレーター。Web漫画を描いたりwebサイトを作ったりしています。
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