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#コラム SAIKURU Vol.180 「全てを遮断して過ごす 自分だけのもう一つの場所」

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SAI建築社が提案する
暮らしと住まいの新しいサイクル
と題して定期的にお届けしている
WEBマガジン「SAIKURU」

 

 

 

全てを遮断して過ごす
自分だけのもう一つの場所

Case 180
【福岡県・福岡市】2023年11月完成
 

福岡市東区の海沿いに佇むマンションの一室に、Fさんのセカンドハウスが完成したのは2023年11月のこと。その場所は、太陽が近く、海を感じる、自然に近いロケーションでした。自分だけの時間を持ちたいという場合、最も身近なのが自室の書斎です。ただ、あくまで日常の延長線にその書斎はあり、完全にはオンとオフを切り替えにくいかもしれません。その点、セカンドハウスは、存在そのものが非日常。ここでどんな時間を過ごすのか。今回は、Fさんの非日常を、インタビューを通じて覗かせてもらいました。

 

海を近くに感じられる
何よりも贅沢な時間

 

 

——セカンドハウスを持ったきっかけは。

実はこのマンションの一室は、かれこれ10年くらい前に購入していたんですよ。その時は、すぐにどうしたいという感じではなかったんですが、いずれ手を加えたいと思っていたんです。
およそ2年前に仕事の節目がありまして、そのタイミングでこの場所をリノベーションし、もう一つの拠点を作ることにしました。


改装前のリビング


改装前の玄関ホール
 

——目の前に海が広がり、とても良いロケーションです。

そうなんですよ。ここは1階にはなるんですが、海との間に遮るものがなくて。購入当時は護岸整備がなされる前で、砂浜が広がっていました。それくらい海が目と鼻の先で、この1階からでも見晴らしは十分ですので、とても気に入っています。テラスで過ごす時間は、本当に贅沢ですね。


 

——ドアを開けたら、真っ正面に、窓越しに海が見え、とてもテンションが上がりました。

ここに来ると、本当に日常と切り離される感じがして、落ち着きますね。自然の近さがひときわ感じられるのは、この場所ならではの醍醐味です。

 

間仕切りを設けず
一つの大きな空間に


——リノベーションをするにあたり、どのようなコンセプトを掲げたのでしょうか。

空間づくりにおいては、大きなワンフロアを目指し、トイレや浴室といった必要不可欠な場所を除いて、間仕切りを設けないことを決めました。


——確かに、ドアを開けた瞬間、遮るものがなく、真正面に海。まさに狙い通りの開放感ですね。

ここでは自分だけの時間を、思う存分楽しみたいと思っていました。だから、できるだけ、窮屈にはしないようにしたんです。のびのびと過ごす。ただ、ゆっくりと過ごす。そういう場所って、作ろうと思って作らないと、なかなかできないですよね。良くも悪くも、現代では携帯電話一つで、世界中、どこにいてもつながれます。だから、私はここに来る時には、完全にオフだと決めているんです。自分がしたいことをする。誰からも、自分の時間に干渉させない。携帯も電源を切って、ただ、ひたすら、ここで自分の時間を過ごしているんです。


 

——1人を楽しむ。そんな意志が感じられる場所です。このイエはスケルトンからのフルリノベーションですよね。

そこは最初から決めていました。中途半端に室内に手を入れていくと、必ず無理が出てくるだろうと思っていましたから。元々は3LDKだったみたいで、それを2LDKにリノベーションされた状態で私が購入していたんですが、扉を設けず、広々とした空間にしたいというビジョンが明確にあったので、スケルトンにすることも想定していましたよ。77平米あるので、ワンフロアに変更すると、かなり開放感がでますよね。


改装前スケルトン状態のリビング①


リノベーション後のリビング①



改装前スケルトン状態のリビング②


 リノベーション後のリビング②

 

——空間はとてもシンプルにまとめてある印象です。

白を基調にすることは決めていました。空間におけるコーディネートの要は、石のテイストを取り入れている点でしょうか。床、キッチンカウンターの天板など、随所に石の質感を取り入れています。床は大理石調になっていて、想像だと少し派手になるかもしれないなと思っていたんですが、空間全体が清潔感のある白なので、うまく調和しているように思います。


 

自分だけの空間だからこそ
とことんディテールは詰める


——間取りについては何度も検討を重ねられたそうですね。

そうなんです。営業の川添さんにはとことん付き合っていただきました。キッチンを縦に配すか、横に配すか、和室の広さをどうするか、そういった大きな点はもちろん、ニッチの奥行きはどれくらいにするか、自転車を室内に気持ちよく置くためのスペースはどの程度確保したら良いか、といったように、本当に1cm単位でディテールは詰めていきました。洗面室の作り付けの棚についても1cm単位でシビアに高さを調整していただきましたし、本当に伝えたいことを全て伝えさせてもらったように思います。そのおかげで、本当に最高の空間になったと胸を張って言えますね。
 




 

——まさかマンションのドアを開くと、そこに広々とした土間が広がり、モダンな和室が目に飛び込んでくるとは思ってもみませんでした。

この土間、すごくいいでしょ。この土間の幅についても、自転車を置くために本当に何度もシミュレーションして、検討しましたからね。その土間からダイレクトにつながる和室も、イメージ通りに仕上がり、嬉しいですね。和室を一段上げているんですが、その立ち上がりの高さもしっかり検討できた分、納得の仕上がりです。当初は個室として寝室を作るか悩んだんですが、ちょっと横になれる場所があれば事足りるなと思って、それならこの和室も仕切りの壁が不要だと判断できました。和室は攻める、と考えていたので、壁紙やそれに付随するディテールを徹底的にこだわりましたね。おかげさまで間仕切りがなくても、メリハリのある自慢の空間になりました。


 

——Fさんが思い描くイメージを一つひとつ、丁寧に仕上げていく。そんな感覚でイエづくりが進んでいったのですね。

そもそも、SAIさんにお願いしたきっかけというのが、企業理念に掲げられている「新職人主義」という言葉にピンときたからなんです。私もこれまでの人生でいろいろな仕事に携わってきましたが、やはり人の手による仕事については、職人としての自覚が大きな力になります。要望が多くなることは私の性格上、分かっていたので、そこにしっかり応えてもらえる建築会社を選びたかったんです。工事中も安心して任せられましたし、最後までしっかりお付き合いいただけ、本当にお願いして良かったと思っていますよ。
 

——室内で一番、苦労、検討された場所はどこでしょうか。

こだわっていない場所はない、というくらいにこだわり尽くしたのですが、その中でも、玄関からリビングへと一直線に続く折り下げ天井は特に苦労が詰まっています。配管との兼ね合い、天井からの高さのバランス、案を出し合いました。本当はあと5cmほど、上にしても良かったのですが、キッチン、和室、リビングといった空間を認識できるよう、あえて5cm下げているんです。色も「石」というテーマに合うよう、グレーカラーを採用し、石の質感を天井部分にも取り入れました。


 

——このセカンドハウス、どのように活用されていますか。

私にとってここは作戦会議室のようなイメージなんです。1人だけの時間の中で、ゆっくりとくつろぐ。何もしない。そうすることで感性が解放され、自然と仕事のアイデアがふわりと浮かんでくる。今日は何もしない、そう決めてここに来るんですが、そんな何もしない時間が、仕事へと良い影響をもたらしてくれるんです。


——誰にも干渉されないからこそ、自分と対話ができるのかもしれませんね。

そういう意味で、周囲に豊かな自然があるのはありがたいですね。海も、空も、一瞬でどんどん移ろっていき、表情が刻一刻と変化していきます。そういう景色をぼんやり眺めていると、心が豊かになっていきますから。
ちょうど海側が真南を向いていて、この太陽が差し込む部分にリビングを配置しました。リビングの一角には足を伸ばしてくつろげるラウンジチェアを置き、海を眺めながらぼんやり過ごしたり、逆側に向けて読書に興じたり、自由気ままに過ごしています。


 

このイエでは、陸側、つまり玄関側に和室、パソコン作業ができるワークテーブルがあり、海側にはダイニングテーブルとソファ、ラウンジチェアといった寛ぎの場を作り出す家具が置かれています。イエの中でも陸側はオン、海側がオフというように、なんとなく緩やかに役割が分けられているんです。そういうオンとオフも良いと思いませんか。


 

——イエの中でオンとオフを生み出す発想、とても素敵です。このセカンドハウスができたことで、ますます感性が豊かになっていきそうですね。

仕事を忘れて仕事ができる、という感じでしょうか。自分の中でも良いサイクルが生まれたと思っています。海を眺めていると、ウインドサーフィンでもやってみたいな、と最近思うんです。感覚がどんどんアクティブになっていきますね。

 

House Producer

SAI建築社
リノベーション事業部
川添 修

私にとっても憧れのセカンドハウスの創造に携わせて頂き、大変光栄でした。Fさんのこだわりやご要望を反映するため、試行錯誤しながら図面を描いたり絵を描いたりしたのはすごく楽しい経験でした。また、随所で私の提案(こだわり)もご採用頂き、私にとっても思い入れのある箇所がありすぎるリノベーションでした。非日常やデザインを吟味していくことは相応の期間を要しますが、最後までお付き合い頂き、ご満足頂けて大変嬉しく思います。
今後とも何卒よろしくお願い致します。

 

 

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ヌードルライター山田がススメる
今月の一杯

【福岡市・東区】中西食堂
 

港町の食堂で
ちゃんぽんに舌鼓。

今も昔も、福岡のシティドライブの人気ルートといえば海の中道エリア。潮風がそよぐシーサイドで車を走らせれば、すっかり気分もリフレッシュします。
そんな海中エリアで昔から絶大な人気を誇っているのが、この老舗「中西食堂」です。



ここの看板メニューが「さざえ丼」。志賀島の名産・サザエを惜しみなく使った一品で、サザエのこりっとした食感、そして噛みしめるほどににじみ出てくる旨味が存分に楽しめます。



ここに来るなら、サザエ一択。そう信じていましたが、よくよく見れば、メニューにちゃんぽんの文字が。ヌードルライターとして、これはマストということで、実際に食べてみて、思わず目を見開きました。
目の前にどんと置かれたちゃんぽんは、この高まった気持ちを静めてくれる納得のビジュアル。盛りがいい。山状で、その中腹、麓には魚介の存在がたっぷりと見てとれます。



スープを口に含むと、その美味さに悶絶。聞けば近くの地鶏料理店から地鶏のガラを分けてもらっているそうで、それに豚骨を足し、和風ダシを合わせて、スープを作っているとそうです。信じられないくらいの本気っぷりなのに、それをどこにも謳わないという奥ゆかしさがたまりません。

そして、港町の食堂で食べるちゃんぽんという、そのなんとも言えない特別な旅情が最高の隠し味です。
ちなみに、このちゃんぽんのスープを使う皿うどんもまた絶品です。スープを麺に吸わせることで、ちゃんぽんよりも力強い味わいに仕上がっています。ぜひ一度、食べてみてほしい一皿です。

 



【住所】福岡市東区志賀島583-7
【電話】092-603-6546
【営業】11:00~17:00頃 ※売り切れ次第終了
【店休】火曜
【P】あり

山田祐一郎(KIJI ヌードルライター)

1978年生まれ。2003年よりライターとしてのキャリアをスタート。現在は日本で唯一(本人調べ)のヌードルライターとして、雑誌、ウェブマガジン、書籍などの原稿執筆に携わる。毎日新聞での麺コラムつるつる道をゆく」をはじめ、連載多数。webマガジン「その一杯が食べたくて」は1日最高13,000アクセスを記録したことも。著書「うどんのはなし 福岡」「ヌードルライター秘蔵の一杯 福岡」。2017年スマホアプリ KIJI NOODLE SEARCHをリリース。未知なる麺との出会いを求め、近年では国内のみならず海外にも足を運ぶ。2019年より製麺所を営んでいた父の跡を継ぎ、「山田製麺」の代表に。執筆活動と並行し、製麺にも取り組む。

 

4コマ漫画
レッツゴーサイクル

今回は一挙に2話分公開!

ラブラドール犬のサイクルと建築士のケンちゃんが
繰り広げる微笑ましい暮らしぶりをお楽しみください。

 


【Kanac 】プロフィール
イラストレーター。Web漫画を描いたりwebサイトを作ったりしています。
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